顎変形症手術、「死亡」という言葉に不安を感じたら? 安心して治療を受けるための正しい知識
顎変形症の治療を検討されている方にとって、外科手術は大きな一歩ですよね。「もしものことがあったら…」と、漠然とした不安を抱く方もいらっしゃるかもしれません。特に、「顎変形症手術 死亡」という言葉を目にすると、さらに心配になってしまうのは当然のことです。
しかし、現代の医療において、顎変形症の手術は非常に安全性が高く、確立された治療法として行われています。もちろん、外科手術である以上、リスクがゼロというわけではありませんが、その確率は非常に低く、医療機関は最大限の注意を払って手術を行っています。
この記事では、顎変形症の手術における安全性の実態や、考えられるリスク、そしてそれらをどのように管理しているのかについて、客観的な情報に基づいて分かりやすく解説します。不必要な不安を解消し、安心して治療に臨めるよう、正しい知識を身につけましょう。
顎変形症手術の安全性について:過度に恐れる必要はありません
まずお伝えしたいのは、顎変形症の手術は、非常に安全性が高いということです。一般的な全身麻酔を伴う手術全般における死亡率は、先進国では極めて低い水準にあります。
ある報告によると、先進工業国における入院手術全体の死亡率は0.4%~0.8%とされており、全身麻酔における死亡率に至っては、さらに低く、健康な患者さんであれば20万件に1件程度にまで改善されていると報告されています(過去30年前と比べると約40倍も改善されています)。
顎変形症の手術は、緊急性の高い手術や重篤な病気の治療手術とは異なり、比較的健康な状態の患者さんに対して計画的に行われます。そのため、事前に詳細な検査を行い、リスクを最小限に抑えるための体制が整えられています。
手術を行う病院も、「顎口腔機能診断施設」として厚生労働省から認可を受けた専門施設であり、経験豊富な矯正歯科医と口腔外科医、麻酔科医がチームとなって治療にあたります。このような専門チームによる綿密な計画と管理のもとで行われるため、安全性が高く保たれているのです。
手術に伴うリスクと医療機関の対策
「死亡」という最も重いリスクは極めて低いですが、どんな外科手術にも、起こりうる合併症やリスクは存在します。顎変形症の手術で考えられる主なリスクは以下の通りです。
1. 全身麻酔に関するリスク
顎変形症の手術は全身麻酔下で行われます。全身麻酔には、以下のようなリスクがごく稀にあります。
- 麻酔薬に対するアレルギー反応: 蕁麻疹、呼吸困難など。
 - 血圧や心拍数の変動: 麻酔中に血圧が大きく変動したり、不整脈が起きたりする。
 - 誤嚥性肺炎: 胃の内容物が肺に入ってしまうこと。
 
医療機関の対策:
麻酔科医が手術前から患者さんの全身状態を詳細に評価し、最適な麻酔計画を立てます。手術中は、心電図、血圧、酸素飽和度などを常にモニターし、わずかな変化も見逃さないよう厳重に管理しています。アレルギー歴の確認や、胃の内容物を避けるための絶飲食指導も徹底されます。
2. 出血に関するリスク
顎の骨を切る手術のため、出血は避けられません。通常は術中に止血処置を行いますが、ごく稀に予期せぬ大量出血が生じる可能性もゼロではありません。
医療機関の対策:
術前に止血に関する検査をしっかり行い、手術中も出血量を常に確認しながら慎重に操作を進めます。必要に応じて輸血の準備も行います。術後も出血が止まらない場合は、適切な処置がとられます。
3. 神経損傷による感覚麻痺
顎周辺には、唇やあごの感覚をつかさどる神経が通っています。手術中に神経が圧迫されたり、ごく稀に損傷を受けたりすることで、術後に唇やあごのしびれ、感覚の鈍さ(知覚鈍麻)が生じることがあります。
医療機関の対策:
手術前にCTなどで神経の走行を詳細に確認し、損傷を避けるよう細心の注意を払って手術を行います。多くの場合、感覚麻痺は一時的で、数ヶ月から1年程度で改善することがほとんどです。しかし、まれに麻痺が残るケースもあります。このリスクについては、事前に十分な説明がなされます。
4. 感染症
手術部位から細菌が侵入し、感染症を引き起こす可能性があります。
医療機関の対策:
手術室は清潔に保たれ、手術器具は滅菌処理されています。手術中から術後数日間は抗菌薬(抗生物質)の点滴を行い、感染予防に努めます。万が一感染症が起きた場合も、早期に発見し、適切な治療を行う体制が整っています。
5. 骨の再形成不全・噛み合わせの不具合
手術後に骨が計画通りに癒合しなかったり、最終的な噛み合わせが想定と異なったりする可能性もごく稀にあります。
医療機関の対策:
術前に3Dシミュレーションなどを用いて綿密な手術計画を立て、手術は正確に行われます。術後は、矯正治療で最終的な噛み合わせを調整し、安定した状態を目指します。万が一、大幅なズレが生じた場合は、再手術が必要になることもありますが、これは極めて稀なケースです。
不安を解消するために、積極的に質問しましょう
顎変形症の手術に関する不安や疑問は、誰でも感じるものです。大切なのは、それを一人で抱え込まず、医療従事者に積極的に質問することです。
- 主治医や麻酔科医に質問する: 手術のリスクについて、ご自身のケースでの具体的な可能性や、万が一の際の対応策について、納得いくまで説明を求めましょう。
 - セカンドオピニオンを検討する: 複数の医療機関を受診し、異なる医師の意見を聞くことで、より安心して治療に臨める場合があります。
 - 情報収集を適切に行う: 信頼できる医療機関のウェブサイトや、専門家が監修した情報源から情報を得るようにしましょう。インターネット上の不確かな情報に惑わされないことが大切です。
 
医療チームは、患者さんが安心して治療を受けられるよう、最大限の努力をしています。疑問や不安があれば、遠慮なく尋ねてください。
まとめ:安全な治療で、顎の悩みから解放された未来へ
顎変形症の手術において、「死亡」という言葉は、確かに大きな不安を伴うかもしれません。しかし、現在の医療技術と徹底した安全管理体制のもとでは、そのリスクは極めて低いと言えます。
顎変形症の治療は、見た目の改善だけでなく、噛み合わせや発音、呼吸といった日々の生活に欠かせない機能を大きく向上させるものです。不安に感じる気持ちは当然ですが、不確かな情報に囚われすぎず、専門の医療機関で正確な情報を得ることが何よりも大切です。
信頼できる医療チームと協力し、ご自身の納得のいく形で治療を進めていくことで、きっと顎の悩みから解放され、より豊かな生活を送ることができるでしょう。あなたの健康と笑顔のために、前向きに治療を検討してくださいね。